〜遠征報告〜
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アングラー 福岡/みっぴ様 御一行
フィールド カナダ・オンタリオ州
期間 2015年9月

カナダ・オンタリオスタイル


写真・文/バッシンヘブン・小松勇介
協力/カナダ・オンタリオ州観光局

 私にとってのアナザースカイ。舞台はカナダのオンタリオ州・トロント。ワーキングホリデーで私がはじめて外国に飛び出し、異文化を体感して以来八年ぶりにまたこの地に戻ってくることができた。はじめてこの地に降り立った時の絶望的不安と何かがはじまる期待感とが入り混じったあの日の感覚。成田から十二時間の飛行を終えトロント・ピアソン国際空港に降り立った時にその懐かしい感覚が見事に戻ってきた。思えば前回のカナダでは初の異国で生活をすることで、もういっぱいいっぱいだった。フィッシングなんて二の次だったが、今回はフィッシングだけに専念できる。遂に北米最大の淡水魚マスキーと、スモールマウスやウォールアイなど豊富なカナダのフレッシュウォーターのターゲットを狙ってフィッシングができる。今回この機会を与えてくださったオンタリオ観光様には足を向けて寝れません。更に今回は、スペシャルゲストに釣りガールみっぴをお迎えして、マスキーをメインに狙いながら、カナダのオンタリオでのフィッシングの魅力をお伝えできればと思っている。



<マスキーの魅力>

 マスキーという魚。こいつはカナダとアメリカの北部の河や湖に棲む北米最大級、やや冷水域に潜む肉食魚である。最大クラスとしては、一九〇〇年前半にミシガンで捕えられたマスキーで、体長が二メートルをこえ体重が約五十キロあったといわれている。丸太ん坊のような巨体にシャベルのような大きな口を持ち、その口の内側には大小鋭い歯がぎっしりと生え揃っている。餌は彼らの前を横切るあらゆる小魚、イモリ、カエル、ネズミ、鳥…全ての生き物で、一度くわえこんだ餌はその鉤のような牙で離さない、バスすらも彼らの捕食の対象となってしまう獰猛の頂点に君臨する王者だ。同じ仲間にパイクという魚もいるが、こちらは若干小ぶりなサイズでマスキーと比べ生息数も多い。マスキーは、別名ワン・サウザントもしくはテン・サウザントフィッシュとも呼ばれ、希少度が全く違う。千回、一万回のキャストでようやく一度ヒットするくらいの幻のターゲットで、生息数自体が少ない魚種なのだ。今回はなんとかして、この憧れの北米最高の肉食魚に出逢うのが最大の目標だ。


<オンタリオの概要>

 そもそもカナダに馴染みがない日本人からすると、カナダというのはアメリカ合衆国の上に位置する"おまけ"くらいなイメージだが、実際に住んでみるとアメリカと明確に文化や人柄に違いを感じることができる。お隣の物騒な国と違い、国の雰囲気として良い意味でのんびり、自然豊な印象を受ける国である。実際、銃犯罪もほとんどない平和な国である。国の端から端まで電車を使うと三日半かかるくらい広大な土地を持つカナダの中で、トロントはカナダ東側に位置し五大湖の畔に位置するカナダ最大の都市である。移民が多い街でもあるので地域によって、イタリア調、ギリシャ調、中国調、フランス調、韓国調、リトル東京など…集落ごとにコミュニティが存在し、モザイク都市となっている。トロントが人類のるつぼとも言われている所以である。またカナダは国民ひとりにひとつずつ分け与えることができるくらい湖の数が膨大に点在している。海でも淡水でもフィッシングパラダイスなのだ。今回はこの無限の湖の中からいくつかの湖に絞っての釣行となった。

 まずトロントに降り立って我々が最初に目指したのはナイアガラであった。車窓からオンタリオ湖畔を望みながらナイアガラへ向かう。オンタリオ湖とはいうものの実際に見ると地平船がみえず海にしか見えない。五大湖の中で一番面積は狭い湖なのだが、それでも日本と四国と同じくらいの途方もない広さである。狭い湖しかしらない日本人にとっては乗っけから圧倒される展開となる。まず向かった先のナイアガラといえば、観光名所、世界三大瀑布のひとつ、ナイアガラの滝があるところである。



<ひとまず到着日の今日はナイアガラの滝観光から…>

 さっそく釣り開始といきたいところだが、その前にオンタリオ観光様の計らいでこの地の観光を今回のメンバー全員ですることになった。私自信、以前この地で観光ガイドを少しの間かじったことがあったとは言え、普段から海外へ釣旅に出ても終日釣りのみというのがほとんどであまり観光をする機会がなかったので、こういう機会は逆に新鮮だった。よりその土地に対する愛着が湧いてくるものである。観光のメインはもちろん五大湖の中のエリー湖とオンタリオ湖をつないでいるナイアガラの滝、ここが魚止まりの滝となっているので魚はどうあがいても上流には登れない。近くで見学すると圧倒的な水量で流れ落ちる滝に見入ってしまい吸い込まれそうになる。実際吸い込まれている人もいらっしゃるので十分注意が必要。日本では考えられないくらい柵は簡単に作られている。日本以外は事故は全て自己責任だ。ナイアガラのエリア全体がアミューズメントパークのようでありながら、間近に迫ると自然のパワーを猛烈に感じることができる。今回は特別に夜の滝のイルミネーションのカラー操作までさせて頂けた。他にもこの周辺ではワイナリーやアイスワインで有名な小洒落たナイアガラオンザレイクの街並みなど見どころは多い。そしてフィッシング前の準備として定番のバスプロショップスへ行く。今回のミッション達成に向けてここでスタッフからの事前の情報収集はやはり外せないところ。日本ではなかなかマスキー専用ルアーは売っていないので事前にここへ行けるととても助かる。

 ナイアガラと言えば、もうひとつ。バサー紙では知らない人はいないであろう、日本でも大人気のルアービルダー西根さんの家が近くにある。今回実際に西根さんに会うこともできた。エリー湖とオンタリオ湖とナイアガラリバーの間という、フィッシングするにはこれ以上ないような羨ましいこの地に長年にわたって根を張り、そしてここから皆さんの手元にルアーを送り続けている。ラージマウスバス、スモールマウス、ウォールアイ、マスキー、トラウト…北米で釣れる魚ならなんでも狙えるこの地で、何べんも何べんもテスト重ね実績を積み上げられてきたルアー達だ。西根さんの作り出すものは、魚が釣れて当然なのだ、今回は時間を作って頂き、工房にも招待して頂いた。我々が到着した時はちょうどフォームから成形している真っ最中で、これらが海を越えて日本の釣具店に送られてきて我々が使うことになるのかと思うと非常に感慨深い。そして西根さんといえば、伝家の宝刀カーヴィング。これも即席でご披露頂き、ひとつの木片から命を宿してゆく職人の造形に一同感動、改めて西根ルアーのバックボーンを知ることで、彼のルアーに対してさらに自信を持つことができるようになった。それにしても、自分の家にバスボートを横付けできる環境って素晴らしいですね…裸一貫でこの地に辿り着き、ここまでの環境を作り上げてきた西根さんの実現力にただただ感服、尊敬の念に堪えません。



<ナイアガラでの釣り>

 翌日から遂にマスキー狙いの修行フィッシングがはじまった。前半の日程はナイアガラリバーの下流、上流+エリー湖と探る。マスキーで使うルアー仕掛けというのは、淡水の釣りの中では最大級にごつい仕掛けを使う。ワームにしてもルアーにしても三十センチは当たり前、まるでGT狙いのようだ。これを岩かげやウィードの際、ここだと思うポイントに投げ込み、潜んでいるマスキーを狙ってゆく。またガイド曰く、我々に気付かれないようにルアーの後ろをピッタリとマスキーが追尾してくることもあるので、そんな状況下ではボートのヘチでシイラ釣りのように竿をハチの字を描いてボート真下でルアーで誘うことも重要だという。竿もリールもバスを主にやりこんでいて軽さを売りにしているタックルを使っている最近の貧弱な我々にとっては、このタックルが重たくして仕方がない。だがバス用の竿でもしっかりと粘るヘビー〜エキストラヘビーの竿であればマスキー専用竿でなくても挑戦することはじゅうぶんに可能だ。道糸は五十ポンド〜のPEライン、そこに魚の牙で道糸を切られないよう百ポンドのリーダーを装着する。マスキーは数が少ない魚なので広く探る必要がある、つまり毎回、毎回この重たい仕掛けを大遠投する気力、体力も必要な釣りである。

 今日はナイアガラリバーの滝より下流、オンタリオ湖への流れ込みまでの探索。水質は意外なほどクリアで三〜五メートルくらいは見通せるほど澄んでいる。だがポイントに到着すると唖然となった。滝の規模が世界最大級であるから、その下の流れもただものではない。日本では経験したこともないような急流、激流の中でのキャストを強いられることとなった。まあとにかく投げ続けるかとはじめてみると、ものの五分もしないうちに、いきなり訳もわからずなにかがヒット。急流の中から元気のよいスモールマウスバスがビッグベイトに飛び出してきた。幸先いいですね…。なにかしら魚信があるなら、千回でも一万回でも投げられるぞ〜と意気込むも、その後はマスキーフィッシングの醍醐味が本領発揮してきた。まあ、釣れない。バイトもない。姿も見えない。完全なる沈黙が続く。一回のキャストでだいたい一分だから、一時間で六十回、移動もあるから一日でまあいいとこ三百回投げれれば三日がかりで一回ヒットか…などと要らぬ計算をしながら、その後は何も感触を掴むこともなくアッと言う間に初日が終わってしまった。事前に読んでいた文献からも、ガイドの話からも、こうなることは事前に想像はしていたが、やっぱり甘い期待も抱くじゃないですか、釣り人ですから。しかし実際マスキー狙いを1日通してやりきってみて、そんな甘さは吹っ飛んだ。一様に皆が言っている事は一致している。マスキーは「釣れない」魚なのだ。マスキー狙いしながら、スキをみてちょこちょこバスに浮気なんかしていたら絶対釣れないな、これは。いよいよ私としても一投も浮気せずマスキーを狙い続ける覚悟を決める必要があった。トロフィーサイズだろうが小物だろうが釣れない、負け戦になることを念頭に、この先愛しの女が振り向いてくれるまでこの重たい巨大ルアーを投げ続けなければならないのだ。



 翌日の釣りは滝の上流側からエリー湖。下流に比べると流れは緩い。とはいってもハーフオンスのシンカーでもまともに底がとれないレベルの流れなので本日も悪戦苦闘。こいつを釣りあげるためには退屈なトローリングで広範囲の探りも視野に入れないと、ガイドと結託して有望エリアを流し切る。何時間が経っただろうか、ディープフラットからの駆け上がりを往復している途中で、その時が来た。ゴン!一瞬で目の覚めると固定金具が外れ何か獲物が我々の仕掛けに食らいついた。期待しながら仕掛けを回収していくと、金色の魚体が見えてくる…正体は本命のヤツではなかったが、ウォールアイの特大級サイズだった。こちらでは料理すると淡泊で美味しいことから、現地ではとても人気が高い魚である。基本は夜行性の魚だが、真昼間に食ってきてくれた。目の水晶がアカメやバラマンディのように白く透明に輝いていて美しい。こいつもいつかは釣りあげてみたかったターゲットであったので、これはこれで嬉しかった。ガイドが早く水に戻せ、と騒ぎ立てるので、出会いに感謝し早々にリリース。それにしてもこのガイドさんは、リリースが徹底しておりこのフィールドの魚を守ろうとする気持ちがよく伝わる。

 気を取り直して、再びトローリング再開するも我々のヒットは結局これだけ。今日も早々に終わろうとしているさなか、ガイドが携帯電話ごしになにやら大興奮している。どうやら話し相手は西根さんだった。我々が釣りをするということで西根さんもマイボートで様子を見にきてくれていたようだ。そして、ニシネルアーでとんでもないサイズのマスキーを掛けて今、我々に見せるためキープしていると言うではないか。「急いでニシネのところへ行くぞ!」エリー湖の流れの吐き出し口まで全速直行すると、フィッシュグリップを使って水中で懸命に巨大な丸太ん坊のような巨魚をキープしている西根さんの姿があった。遠くからでもわかる、それはまぎれもなくそれはマスキーであった。バスを狙っていたらマスキーを発見してしまい、ちょっと狙ってみたら食ってきちゃったと簡単に本人は謙遜して話していたが、とにかくその魚体を拝見させていただくと、マスキーという名前はもともと「醜い」が語源であるが、実際は白銀の体にまだらに入る紅色とも緋色とも言えない模様が美しく、古代魚を思わせる重厚でその威風堂々とした風格、太陽で輝く鱗と相まって、それはそれは神々しい姿だった。西根さんもこんなサイズはもちろん初めての経験だったようで、それも自分のルアーで記録魚のマスキーを釣りあげた直後なんだから、その興奮度合いは皆さんも想像できるでしょう。とりあえず私にとっては棚からぼた餅、オンタリオのマスキーの御姿の証拠写真だけは残すことができ、私的には大変複雑な心境ながらも日本の皆さまにオンタリオのマスキーを紹介できるような写真を撮るという最低限の任務は達成した。フィッシング終了後、ガイドも我に返って私と同じ心境だったようで、マスキー用特大ルアーを投げ続けてもダメで、バス用ルアーであんなサイズが釣られてることにどうも納得いかないようで、難しい表情でパートナーとブツブツと話しあっていたのが印象的だった。プロフェッショナルの意地というやつか。



 この地での釣りは三日間、今日でナイアガラは最後。今までと同じようにマスキーを前半は狙うも、やはり無反応の時間は続く。エリー湖まで登りきっても無反応だったところで、ガイドが遂にしびれを切らした。せっかくだからレイクエリーのバスフィッシングもチャレンジしてみるか!BASSのトーナメントフィールドでもある憧れのレイクエリーのスモール狙い。そんなもん、ほんとはやってみたいに決まっているじゃないですか。一投も無駄にせずマスキーを狙わなきゃいけないことは重々承知の上で、昨日の西根さんのマスキー写真が撮れたことから私の中にいくらかの余裕ができていたのも事実。私も、待ってました!とつい諸手をあげて賛同してしまった。OK、早速ガイドがとっておきのシャローのハードボトムに移動すると、サイトでどんどんグッドサイズのスモールを見つけていく。野尻湖のしょっぱいスモール狙いばかりやっていた私には、本場でのスモールマウスバス狙いは刺激が強過ぎた。これをメインに狙いにこの地に来ても大満足できるほどの内容。躍動感あふれる本来のスモールマウスバスを存分に感じることができた。プレッシャーが少ないとこんなにも好奇心旺盛な魚だったんですね、スモールって。なんでマスキーなんか狙いに来てしまったんだろうか、スモール狙いが半日しかできなかったのがなんとも惜しい! Basserのアマケンさんの記事の中で何度も読んでいたフレーズ、シーンが、そのまま私の目の前には広がってくる。湖のくせにうねりを伴った波が湖岸に押し寄せてくる。レイクエリーのラフウォーターを二時間ドライブとは、そういうことだったのか、、百聞は一見である。結局、この日は最後までスモール狙いに没頭してしまい、この地では私にはマスキーは釣れずチャンスもなく終了してしまったが、ガイドもホスピタリティ溢れとても親切だったし、楽しみ方も豊富。ここにはまた戻って来たいと感じるナイアガラ釣行であった。



<ライスレイク>

 日程の後半、我々はナイアガラからレイクオンタリオをぐるっと回りこんで一同はカワルサレイクスという湖群のひとつ、ライスレイクの湖畔の老舗リゾート、エルムハーストを目指した。北米で釣ることのできる魚は全てこのカワルサレイクス周辺で釣ることが可能だという噂だが、はたして…。宿泊地はリゾートのコテージタイプで、普段はフィッシングロッジかモーテルくらいしか泊まったことがない私にとっては、これがとても新鮮な場所だった。フィッシングはもちろん、パドルボート、ウェイクボート、乗馬から水上飛行、スパなど各種アクティビティも楽しめるので、特に家族で来るならばこういう施設を利用するという選択肢はおおいに有りだ。エコロジカルなところもウリにしており、ここのレストランでの食材料は肉も野菜も全てここの敷地内で賄っているらしい。我々釣り人は普段そんなことは気にも止めないが、やはり女性陣はそういうところに反応するようだ。私は前半もマスキー狙いだったが、前半別の場所でトラウト狙いをされていたみっぴ組も合流し全員揃ってのライスレイクでのフィッシング。ここでの釣り初日は、カナダきってのメジャーアングラーのボブ・イズミさんにまでトーナメントで忙しい合間を縫って我々のために来て頂いて、ありがたいことに彼のバスボートでフィッシングさせてくれた。まずはライスレイクがどんなフィールドなのか様子を見てみることに。今度は止水域のレイクなのでホッとできた。どこへ行ってもウィードビッチリでちょっぴりマッディ、全体的にシャローエリアが多く…琵琶湖の南湖のようなイメージと言えばお分かり頂けるだろうか。従ってこのレイクでは狙いはウィードの切れ目であったり、ブレイクに点在する岩であったりを狙ってゆくことになりそうだ。これ以上ない快適バスボートで調査開始。ボブイズミさんが魚のポジションをみつけだそうとしていると、ここでいきなり本領発揮したのは、みっぴだった。まあこの方、釣ります、釣ります。ボブイズミさんも苦笑いしちゃうくらい。スモールマウスバスからウォールアイ、ロックバス、トドメはひとつのルアーにスモールのダブルヒットまで、とにかく次々ヒットさせていくみっぴの姿は見ていて爽快だった。それにしてもみっぴさん、写真撮るとホント絵になる人ですね。私の方は…いい訳ですが巨大ルアーによる「マスキー狙い」縛りですので相変わらず何も釣れません。まったく、罰ゲームをさせられているかのような感覚でございます。みっぴさんは一通り釣ってしまったので、気持ちの余裕を持って明日からは真面目にマスキーを狙うそうです…。



 翌日からは、ルアー組とフライフィッシング組に分かれての釣り。この日は朝から無風で霧が立ちこみ湖は深い静寂に包まれ、なんというか抜群の雰囲気を醸し出していた。カナダに着いてからここまで、このアホみたいにデカいルアーを何投してきたんだろうか。そしてここまで一切の感触がない釣りというのも珍しい。そこにいるんだか、いないんだか、どうやって食ってくるのか何が好きなのかすらよくわからない獲物を追っかけて。ガイドがやっていたリトリーブ方法をマネして今日も投げ続ける。今は結果が出なくても、やり切るしかないんだ、なんて詩的に自分に酔っていると…突如、みっぴが叫んだ。「あ、出た!!」私が振り返ると、シュラプネルを装着したヘビータックルで巨大ルアーをブンブン振っていた彼女の竿が、根元からヒン曲がりファイトしていた。「何?!!」水面に浮かびあがってきた魚体を見ると、それが本命のマスキーであるとすぐに理解することができた。ほんとに、みっぴさんには素直に脱帽ですよね、もうなんというか、この世の無常というか自分の無力さを痛感というか…



いやいやいやここは全力で彼女を祝福する場面ですね、ワタシまだまだ人間ができてないので釣り師として気持ちの切り替えに戸惑いながらも、ここは一端釣りを止め、快挙を果たしてくれた彼女を船上の皆と持参のシャンパンとともに祝福した。皆が盛り上がっている中、記念証拠写真もそこそこに、船中みなさまで余韻に浸る中、悔しい…勝手にひとり追い詰められ気が気でない私はキャストをまた始めた。するとどうだろう、世の中捨てたもんじゃないですね、、何投もしないうちに脳裏に焼きつくようなクライマックスな場面が私にも訪れてくれた。

 水面直下をリトリーブしていた私の巨大ワームに、顔三分の一くらいを水面からザバッと出して、ヤツが飛びかかってきたのだ。そこから先は無我夢中。あまり何も覚えていない。そいつのファイトは強かったのか?どうキャッチしたか?無事キャッチもしたし、ついに私の証拠写真も撮ることができた。しかし何がどうだったかさっぱり覚えていないのだ。しかしバイトシーンだけは鮮明に覚えている。今でも霧立ちこむ湖面でそいつが襲いかかってきたその場面を、私の頭の中だけならいつでもどこでもスローモーションで再生することができる。
 結局その一本だけ。残りの日々も精いっぱい投げ続けてはみたが、二度とチャンスが来ることはなかった。ガイド曰く、駄目な方角から風が吹いていたり、暑すぎたり。やはり、みっぴと私が相次いでヒットしたあの日、あの時間の一瞬だけ、気象条件、場所、食べたいルアーの形、ルアーの動き、全てが見事にマッチしたということなんだろうな。


 お目当ての女性を獲れたあとだから、いくらでも大きいこと言えるんでしょうが、今回、私のキャッチできた魚はサイズとしては全然トロフィークラスの丸太ん坊みたいなマスキーではなかったですよ、でもなんとか報われました。自分自身の記録魚狙いはまた次回計画して行けばいい話。それよりも自分のこれからの一生の記憶に残るような魚を獲ることができた。これこそがプライスレスな釣り遠征の醍醐味だと心底感じるわけです。心折れそうになりながら苦投を繰り返し、最高に幸せな釣り人生を味わうことができる。そんな快楽を味わうことができるのが、カナダ・オンタリオのマスキーフィッシングだ。せっかく皆さんも釣り人をやっていらっしゃるならば、一度は挑戦してみないといけませんね。やってみないなんて、釣り人生損してますよ…
 今回はマスキーがメインだったが、バス、トラウト、サーモン、パイク、ウォールアイ…ターゲットが盛りだくさん過ぎるで、一回の釣行で欲張りフィッシングをできるのが正しいオンタリオスタイル。一度の訪問ではとても賄いきれないので、是非またここに戻ってこようと心に誓った。



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